このページで確認すること
前払金は、終身にわたって受け取る家賃やサービス費用の全部または一部を、入居時にまとめて払うお金です。ここで確認できるのは、前払金について老人福祉法が設置者に求めていること(算定根拠の書面明示・保全措置・返還の取り決め)と、契約書で読む点です。施設の種類の違いは介護保険施設の比較、費用が所得で決まる軽費老人ホームは軽費老人ホームのページで扱っています。
前払金について法律が決めていること
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 算定根拠の明示 | 前払金を受け取る設置者は、算定の基礎を書面で明示します。 | 老人福祉法第29条第9項 |
| 保全措置 | 前払金の返還債務を負うことになる場合に備え、必要な保全措置を講じます。 | 同法第29条第9項、同法施行規則第20条の10 |
| 返還の契約 | 入居から一定期間内に契約が解除された場合や入居者が亡くなった場合に、前払金から所定の方法で算定した額を引いた額を返還する契約を結びます。 | 同法第29条第10項 |
| 権利金の禁止 | 家賃・敷金・介護等の対価を除き、権利金その他の金品を受け取れません。 | 同法第29条第8項 |
前払金の対象は「入居一時金、介護一時金、協力金、管理費、入会金その他いかなる名称であるかを問わず」、家賃や利用料の対価として受け取る全ての費用です。ただし家賃の6か月分を上限とする敷金は除かれます(施行規則第20条の9)。名称が違っても、一括で払うお金は前払金として扱われます。
保全措置の4つの方法
保全措置は、設置者が倒産などで返還できなくなったときに備える仕組みです。厚生労働大臣が定める措置(平成18年厚生労働省告示第266号)は、次のいずれかです。
- 銀行・信託会社などが、設置者の返還債務を連帯して保証する契約
- 保険会社との保証保険契約
- 信託会社等との、入居者を受益者とする信託契約
- 高齢者の福祉の増進に寄与することを目的とする一般社団法人・一般財団法人との保全契約(都道府県知事が認めるもの)
告示は、保全する金額を「あらかじめ契約で定めた予定償却期間のうち残存する期間に係る額」と「500万円」のいずれか低い方の金額以上としています。告示が求める保全金額は「以上」の下限で、前払金の全額の保全を一律に求めるものではありません。全額が守られるかどうかは契約先ごとに異なるため、保全の方法と対象の金額を、設置者に書面で確認します。
平成18(2006)年3月31日までに届出があったホームは保全措置の義務化に経過措置があり、令和3(2021)年4月1日以降の新規入居者から義務の対象になりました(標準指導指針)。
契約が終わったときの返還
返還の決まりは、施行規則第21条が定めています。
| 契約が終わった時期 | 決まっていること |
|---|---|
| 入居後3か月が経過するまで(解除・死亡による終了) | 前払金から、家賃等の月額を30で割った額に、入居の日から契約終了日までの日数を掛けた額を引いた残りを返します。 |
| 入居後3か月を過ぎてから、前払金の算定で想定した入居期間が終わるまで | 契約終了の時点から計算した、所定の方法による額を前払金から引いて返す取り決めが必要です(算定方法は施行規則第21条第2項第2号)。 |
| 入居開始可能日より前の解除 | 標準指導指針は、既に受け取った金額の全額を返すよう求めています。 |
3か月の期間は「入居の日から」数えます。標準指導指針は、解約の予告期間を設けて、この返還が義務になる期間を事実上短くして入居者の利益を不当に害してはならないと定めています。契約書の予告期間の長さと、返還の対象期間との関係も読んでおきます。
返還額の計算例(仮の数字)
次は計算の流れをつかむための仮の例で、実際の施設の契約条件ではありません。前払金600万円、家賃等の月額18万円とします。
| 退去の時期 | 計算 | 返還額 |
|---|---|---|
| 入居40日目に契約終了(3か月以内) | 18万円 ÷ 30 = 6,000円。6,000円 × 40日 = 24万円を引く | 600万円 − 24万円 = 576万円 |
| 入居12か月目に契約終了(3か月を超えた場合の一例) | 初期償却率30%で180万円。残り420万円を想定居住期間60か月で均等に償却すると月7万円。12か月分の84万円が償却済み | 420万円 − 84万円 = 336万円 |
1行目は施行規則第21条第2項第1号の式(月額÷30×入居日から契約終了日までの日数)に当てはめた例です。2行目の初期償却と均等償却の方法は仮の契約条件で、3か月を超えた場合の算定式は契約ごとに異なります。厚生労働省の標準指導指針の重要事項説明書の様式には、想定居住期間(償却年月数)、想定居住期間を超えて契約が続く場合に備えて受け取る額(初期償却額)、初期償却率、入居後3か月以内・3か月を超えた場合の返還金の算定方法を書く欄があります。契約書でこれらの数字と式を確かめ、同じ手順で試算してみてください。
想定居住期間と、期間を超えた場合の上乗せ
標準指導指針は、前払金の算定根拠を、想定居住期間を設定したうえで次のように求めています。
- 期間の定めがある契約: 1か月分の家賃またはサービス費用 × 契約期間の月数
- 終身にわたる契約: 1か月分の家賃またはサービス費用 × 想定居住期間の月数 + 想定居住期間を超えて契約が続く場合に備えて受け取る額
想定居住期間を超えて契約が続く場合に備える額は「具体的な根拠により算出された額」とすることが求められています。前払金の償却年数は、平均的な余命などを考えて想定した期間です。この上乗せ部分の名称や扱いは設置者ごとに違うため、契約書と重要事項説明書で、いくらがどの期間に充てられ、途中で契約が終わったときに返還の対象になるかを確認します。介護保険の利用者負担分を前払金で受け取ることは、利用者負担が不明確になるため不適当とされています。
契約前に確認する点
| 観点 | 質問 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 算定根拠 | 前払金の算定の基礎が書面で示されていますか。想定居住期間は何年ですか。 | 法律が設置者に書面での明示を求めているため。 |
| 保全措置 | 4つの方法のうちどれで保全していますか。保全の対象になる金額はいくらですか。 | 返還できなくなったときの守られ方が方法と金額で変わるため。 |
| 返還金 | 入居3か月以内・3か月以降それぞれの返還額の計算式は、契約書に書かれていますか。 | 指針が、返還額の明示と十分な説明を求めているため。 |
| 予告期間 | 解約の申出から契約終了までの予告期間は何日ですか。 | 返還の対象期間を実質的に短くしていないかを見るため。 |
| 内金 | 契約時に払う内金は前払金の2割以内ですか。残金はいつ払いますか。 | 指針は、内金を前払金の20%以内とし、残金は引渡し日前の合理的な期日以降に受け取るよう求めているため。 |
| 名称の違う費用 | 入居金・協力金などの名称の一括払いは、前払金として返還の計算に含まれますか。 | 名称を問わず一括払いが前払金にあたるため。 |
よくある質問
前払金が全額保全されているか、どこで分かりますか
設置者に、保全措置の方法と保全の対象金額を書面で確認します。設置者は届出時に保全措置を講じたことを証する書類を提出するため(施行規則第20条の5)、不明な点は施設の所在地の都道府県の担当課にも問い合わせられます。
入居して2か月で退去すると、前払金はどうなりますか
入居後3か月以内の契約終了は、月額を30で割った額に入居日から終了日までの日数を掛けた額を引いた残りが返還の対象です。実際の金額は契約書の算定式で決まります。
契約を結んだあとで疑問が出たときの相談先は
運営の指導は都道府県知事が行い、法令違反がある場合は改善命令などができます(老人福祉法第29条第15項)。契約内容の相談は、介護サービスの苦情・相談窓口の案内も参照できます。
公式根拠
- e-Gov法令検索 老人福祉法 第29条(有料老人ホームの届出・保全措置・返還)
- e-Gov法令検索 老人福祉法施行規則 第20条の5・第20条の9・第20条の10・第21条
- 厚生労働省 厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置(平成18年厚生労働省告示第266号)
- 厚生労働省 有料老人ホーム設置運営標準指導指針(前払金の算定・返還・内金)
確認日: 2026年10月12日。標準指導指針は国の通知で、都道府県の指導指針は内容が異なる場合があります。特定の施設の契約が適切かどうかの判断や、施設の比較・紹介は行いません。
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