認知症と権利擁護

認知症の人の個人賠償責任保険(自治体の保険事業と事前登録)

認知症の親が他人に損害を与えたときに備える自治体の保険事業があります(自治体の事業の例・事前登録)。補償額や条件は自治体ごとに異なります。民法第714条と自治体の公表資料で確認した内容だけを整理します。

このページで終える確認

認知症の親が外出して線路に入るなどして他人に損害を与えたとき、家族が賠償を求められる場合に備える仕組みとして、自治体が保険料を負担する個人賠償責任保険の事業を行っている市区町村があります。このページでは、民法の条文と自治体の公表資料で確認できた範囲だけを、案内として整理します。

実施している自治体とそうでない自治体があり、対象・補償額・事前登録の条件は自治体ごとに違います。民間の保険商品の比較や推奨、賠償責任が実際に誰に生じるかの法的な判断は、このページでは行いません。

家族に賠償責任が及ぶ可能性の根拠

民法第714条は、責任能力のない人が他人に損害を与えたとき、その人を監督する法定の義務を負う人が賠償責任を負うと定めています。ただし、監督義務者が義務を怠らなかったとき、または義務を怠らなくても損害が生じたはずのときは、責任を負いません。監督義務者に代わって監督する人も、同じ責任を負うとされています(同条第2項)。

認知症の親の家族がこの責任を負うかどうかは、個別の事情で決まります。このページで結論を出すことはできません。自治体の事業は、こうした可能性に備えて家族の負担を減らすために設けられています。

自治体の保険事業で公表されている内容(例)

自治体が公表している認知症の人向け個人賠償責任保険事業の例
項目神奈川県大和市(2017年の発表資料)愛知県大府市(案内チラシ)
契約者市が保険契約者市が契約者
対象者はいかい高齢者等SOSネットワークの登録者認知症または認知症の疑いがあり、在宅で生活し、保険加入を希望する人で、事前登録を済ませた人。保険のみの加入はできない
個人賠償責任の補償額3億円(発表時の予定)1億円(免責金額0円)
ほかの補償死亡・後遺障害保険金300万円、入院・通院の保険金(発表時の予定)死亡時の見舞金15万円(定額)
本人・家族の保険料負担自己負担なし保険料の負担なし
補償の対象になる例他人の物を壊した、線路内に立ち入って鉄道会社に車両損壊や遅延の損害を与えた、自転車事故で相手に損害を負わせた日常生活における偶然な事故で、家族などが損害賠償責任を負った場合

表は横にスクロールできます。大和市の欄は2017年の発表時点の内容で、現在の補償額・対象は市の最新の案内で確認してください。確認日は2026年10月12日です。

表の内容はあくまで例です。

厚生労働省が公表している自治体の取組の事例にも、個人賠償責任保険・見守りシール・事前登録制度を組み合わせた愛知県内の例が載っています。お住まいの自治体に同じ事業があるとは限らず、補償額・対象・手続きは自治体ごとに異なります。

事前登録とはどういうものか

大府市の案内では、行方不明になる可能性がある人の情報をあらかじめ市に登録する「認知症高齢者等事前登録制度」があり、保険事業は登録した人が対象です。登録の手続きには、本人の介護保険被保険者証または障がい者手帳と写真が必要と案内されています。大和市の事業も、見守りの事前登録をしている人が対象です。

登録は、行方不明のときの早期発見のための仕組みと一体になっています。見守りの全体像は認知症の見守りSOSネットワークのページで確認できます。

家族が先に確認しておくこと

  • お住まいの市区町村の高齢福祉課や認知症地域支援推進員、地域包括支援センターに、認知症の人向けの賠償保険事業と事前登録制度があるかを聞く
  • ある場合は、対象者の条件(在宅か、認定の有無)、補償額、事故が起きたときの報告先を確認する
  • 自治体の事業がない場合は、すでに加入している保険に個人賠償責任の補償が付いているか、補償を受けられる人の範囲に親が入るかを、契約している保険会社や契約書で確認する

運転に不安があるときの手続きは認知症と運転免許のページで確認できます。

よくある質問

自治体の保険に入ると、保険料は誰が払いますか

確認できた大和市・大府市の資料では、市が契約者となり、本人・家族の保険料負担はないと案内されています。他の自治体は、それぞれの案内で確認してください。

要介護認定を受けていないと対象になりませんか

大府市の案内では、認知症の疑いがある人も対象で、介護保険を使っていない人は認知症初期症状チェックリストで確認するとされています。条件は自治体ごとに異なります。

保険に入っていれば、事故のときの責任が決まりますか

保険は、賠償が生じたときの支払いに備えるものです。賠償責任が誰にあるかは、個別の事情で決まります。このページでは判断しません。

よくある質問の答えは、2026年10月12日に下の公式根拠で照合しました。

公式根拠

確認日: 2026年10月12日。個別の賠償責任の判断・保険商品の推奨は行いません。お住まいの市区町村・地域包括支援センターへご確認ください。

← 自分の準備状況へ戻る