認知症への備え

法定後見・任意後見・家族信託の比較(開始時期・費用・後見人報酬)

親の判断能力が下がったときの財産管理の手段のうち、公的な資料がある法定後見・任意後見・家族信託を、始まる時期と決める人、費用の公表値で並べます。後見人報酬は、最高裁判所の令和7年7〜12月の調査と、家庭裁判所のめやすの原文で確認します。

このページで確認すること

3つの手段が、いつ・誰の判断で始まり、どんな費用が公表されているかを並べます。どれを選ぶべきか、後見の類型にあたるか、といった個別の判断は行いません。個別の相談は、家庭裁判所、公証役場、お住まいの地域の地域包括支援センターなどで受けられます。事業者や専門職の料金の比較、契約書のひな形、専門家の紹介は扱いません。

3つの手段の比較

法定後見・任意後見・家族信託の比較(確認日: 2026年10月7日)
項目法定後見任意後見家族信託
始まる時期判断能力が下がったあとに、家庭裁判所へ申し立てる判断能力があるうちに公正証書で契約する。効力は、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときから信託契約を結んだときから効力が生じる(信託法4条1項)
支援する人を決める人家庭裁判所。候補者を書いても、その人が選ばれるとは限らない本人が契約で決める委託者が契約で受託者を決める
判断能力との関係後見は「判断能力を欠くのが通常」、保佐は「著しく不十分」、補助は「不十分」の3類型本人が十分な判断能力を持つ時に契約するパンフレットは「将来の判断能力の低下に備える」使い方を例に挙げる
公表されている費用後見人の報酬は本人の財産から支払う(本ページの報酬の節)契約時に公正証書の手数料11,000円・登記嘱託手数料1,400円・登記印紙2,600円など。監督人選任の申立てに800円と1,400円の収入印紙今回確認した法務省のパンフレットの範囲では、費用の数字は確認できていない
終わる時期本人の能力が回復するか、本人が亡くなるまで続く今回確認した資料では確認できていない信託の目的の達成、または法の定める終了事由(委託者と受益者の合意など)で終わる

表は横にスクロールできます。任意後見の「終わる時期」と家族信託の費用は、今回確認した公的資料に数字や定めが見当たらなかった部分です。

本人の状態で見た整理

すでに判断能力が下がっているかどうかで、使える入口が分かれます。以下は資料に書かれた前提の整理で、親の状態がどれにあたるかの判定ではありません。

  • 判断能力があるうち:法務省は、任意後見を「本人が十分な判断能力を有する時に」公正証書で契約する制度と説明しています。法務省の信託パンフレットは、家族信託の典型例として、親が将来の判断能力の低下に備え、子と信託契約を結ぶ場合を挙げています。
  • すでに判断能力が不十分な場合:法定後見は、判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3類型があります。申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などです。保佐・補助で本人以外が申し立てるときは、本人の同意が必要です。
  • 任意後見の契約があるのに判断能力が下がったとき:契約だけでは効力が生じません。本人の判断能力が下がったあと、家庭裁判所が任意後見監督人を選んで初めて、任意後見人が動き出します。

法定後見の3類型と権限

法定後見の3類型(法務省の説明。確認日: 2026年10月7日)
類型本人の判断能力支援者の権限
後見欠けているのが通常の状態財産管理全般の代理権があり、日常生活に関する行為以外はすべて取り消せる
保佐著しく不十分借金や不動産の売買など法律で決まった行為への同意権があり、特定の法律行為の範囲で代理権を与えられる
補助不十分家庭裁判所が決めた特定の法律行為について、同意権や代理権を与えられる

すべての類型で、日用品の購入など日常生活に関する行為は取消しの対象外です。後見人には親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職や法人が選ばれることもあり、複数人が選ばれることもあります。

後見人報酬の目安

家庭裁判所が公表している「めやす」は、報酬の額を法律で決めた基準ではなく、裁判官が事務の内容と管理する財産などを総合して決めると説明しています。最新の全国の実績は、最高裁判所が令和7年7月〜12月分を公表しています。

最高裁判所の調査(令和7年7月〜12月)

調査の対象は、この半年間に認められた報酬付与の申立て102,466件で、そのうち成年後見人は66,111件です。報酬付与額は審判で決まった金額で、実際に全額が支払われたかどうかは資料では分からないとされています。流動資産額は、現金・預貯金・有価証券の合計です(後見制度支援信託などを除く)。親族以外の成年後見人で、付加報酬の求めがない事件の最も多い報酬額は次のとおりです。

親族以外の成年後見人・付加報酬の求めなし(最高裁判所、令和7年7月〜12月、確認日: 2026年10月7日)
本人の流動資産額最も多い報酬付与額その割合
100万円未満20万円台73.9%
100万円以上500万円未満20万円台80.2%
500万円以上1000万円未満20万円台80.6%
1000万円以上5000万円未満30万円台54.0%
5000万円以上1億円未満60万円台50.3%
1億円以上70万円台43.0%

調査には、報酬の対象期間が12か月ではない事件や、後見人が複数いる事件も含まれます。資料は概数で、後日訂正されることがあると断っています。親族が後見人の場合や付加報酬の求めがある場合は、割合の分かれ方が異なるため、原文の表で確認してください。

家庭裁判所のめやす(横浜家庭裁判所、平成23年4月1日付)

横浜家庭裁判所の資料は、専門職が成年後見人に選ばれた場合の基本報酬を、通常の事務で月額2万円としています。管理する財産(預貯金・有価証券などの流動資産)が1000万円超5000万円以下なら月額3万〜4万円、5000万円超なら月額5万〜6万円です。身上監護に特別に困難な事情があった場合は、基本報酬の50%の範囲で付加します。成年後見監督人や任意後見監督人の基本報酬は、財産が5000万円以下で月額1万〜2万円、5000万円超で月額2万5000円〜3万円です。

この資料は平成23年付で、横浜家庭裁判所の公表分です。現在の全国の実績は上の最高裁判所の表を見て、地域ごとの最新のめやすは、親が住む地域の家庭裁判所に確認してください。東京家庭裁判所・大阪家庭裁判所の過去のめやすのURLは、今回の確認時点では開けませんでした。

家族信託の仕組み

法務省は、令和8年3月31日に信託制度のパンフレット「知って活用 信託制度」を公表しました。パンフレットは、認知症などに備える財産管理で、親族間の信託の利用が有効であるとしつつ、制度が十分知られていないとしています。

  • 登場するのは、財産を託す委託者、財産を管理・処分する受託者、利益を受ける受益者です。親が委託者と受益者を兼ね、子が受託者になる例が示されています。
  • 信託の方法は、契約、遺言、自己信託の3つで、契約なら締結したときから効力が生じます。
  • 受託者には、信託の目的に従って事務を行う義務、信託財産と自分の財産を分けて管理する義務、帳簿を作る義務などがあります。受益者は、受託者から報告を受ける権利などを持ちます。
  • 不動産のように登記・登録がある財産は、信託の登記・登録をしないと、信託財産であることを第三者に主張できません。

よくある質問と相談先の早見表

状況ごとの入口と主な相談先(資料に書かれた前提の整理。個別の判定ではありません。確認日: 2026年10月7日)
状況資料で示されている入口主な相談先
判断能力があるうち任意後見契約(公正証書)、家族信託公証役場、法務省の信託制度の案内
すでに判断能力が不十分法定後見(後見・保佐・補助の3類型)家庭裁判所
任意後見の契約があり、判断能力が下がった家庭裁判所による任意後見監督人の選任家庭裁判所
費用の助成や福祉サービスの利用援助を知りたい成年後見制度利用支援事業、日常生活自立支援事業お住まいの地域の地域包括支援センター、市区町村

Q. 親が元気なうちに、任意後見契約を結べば後見人はすぐ動きますか。

契約だけでは効力が生じません。本人の判断能力が下がったあと、家庭裁判所が任意後見監督人を選んで初めて、任意後見人が動き出します。

Q. 法定後見の申立てで、子どもを後見人の候補にすれば必ず選ばれますか。

選ぶのは家庭裁判所で、候補者を書いても、その人が選ばれるとは限りません。親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職や法人が選ばれることもあります。

Q. 後見人への報酬は、誰が払いますか。

後見人の報酬は本人の財産から支払います。金額は、事務の内容や管理する財産などを踏まえて裁判官が決めます。最近の全国の実績は、本ページの「後見人報酬の目安」の表で確認できます。

Q. 家族信託と成年後見は、どちらを選べばよいですか。

このページは、どちらを選ぶべきかの判断は行いません。始まる時期、決める人、公表されている費用を並べているので、比較したうえで、家庭裁判所・公証役場・地域包括支援センターなどに相談してください。

未確認のまま扱っている事項

  • 法定後見の申立てに必要な費用(手数料・登記・鑑定費用の金額)は、今回確認できた公的な資料に金額が見当たらず、載せていません。
  • 家族信託の設定にかかる費用、家庭裁判所の関与の有無、後見制度との併用や身上監護(介護サービスの契約など)の扱いは、今回読んだパンフレットの範囲では確認できていません。
  • 任意後見の費用の数字は、厚生労働省の成年後見制度の案内ページに載っている金額です。公証役場ごとの追加費用(証書代や郵送料など)は未確認です。
  • 遺言・生前贈与との比較は、このページでは扱っていません。
  • 最高裁判所の調査は半年分の実績で、個別の事件の報酬額を予測するものではありません。

関連するページ: 費用の公的助成は成年後見制度利用支援事業のページ、判断能力があるうちに契約して使える福祉サービスの利用援助は日常生活自立支援事業のページで確認できます。

公式根拠

確認日: 2026年10月7日。個別の判断能力の判定、どの手段を選ぶかの助言、契約書の作成は行いません。ご自身の状況の相談は、家庭裁判所・公証役場・地域包括支援センターなどへご相談ください。

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