不利益取扱いの禁止とハラスメント防止措置

介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁止とハラスメント防止措置

介護休業や介護休暇などを申し出たり利用したりしたことを理由に、解雇や降格などの不利益な取扱いをすることは禁止されています。あわせて、会社には介護休業等に関するハラスメントの防止措置を講じる義務があります。禁止される範囲、ハラスメントに当たる言動の3つの型、会社が講じる措置、相談先を、条文と厚生労働省の資料で確認します。

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介護の制度を使ったことを理由とする不利益な取扱いが禁止されていること、職場の言動にも会社の防止義務があること、困ったときの相談先の三つを確認します。個別の言動がハラスメントや違法な取扱いに当たるかどうかの判断は、このページでは行いません。

会社に義務づけられた制度の周知や相談体制の全体は会社が介護で守る義務の確認項目、申出が受け付けられないときの援助・調停の制度は介護休業を巡るトラブルの相談先で扱います。ここでは、その二つの間にある「制度を使ったことで不利に扱われる」「周囲の言動で使えなくなる」場面を扱います。

不利益取扱いの禁止:どの制度が対象か

厚生労働省の公式ページは、介護休業等を申出・取得したこと等を理由とする、解雇、雇止め、降格などの不利益な取扱いは禁止されていると説明しています。育児・介護休業法は、制度ごとに次の条文で禁止しています。

介護に関する制度ごとの不利益取扱いの禁止条文(確認日: 2026年10月10日)
制度禁止される理由条文
介護休業介護休業の申出をしたこと、介護休業をしたこと第16条
介護休暇介護休暇の申出をしたこと、介護休暇を取ったこと第16条の7(第16条を準用)
所定外労働の制限(残業免除)請求をしたこと、所定労働時間を超えて働かなかったこと第16条の10
時間外労働の制限請求をしたこと、制限時間を超えて働かなかったこと第18条の2
深夜業の制限請求をしたこと、深夜に働かなかったこと第20条の2
介護のための所定労働時間の短縮等の措置申出をしたこと、措置が講じられたこと第23条の2

いずれも「解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」という定めです。たとえば第16条は「事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」と書いています。「休んだから査定を下げる」「時短を使うなら契約を更新しない」のように、制度の利用が理由になっている取扱いが対象です。どの取扱いが不利益に当たるかの個別の判断は、労働局の窓口に相談します。

制度の中身は両立支援制度6種類の違いと介護のための所定労働時間の短縮等の措置にあります。

ハラスメントの防止:職場の言動も対象

育児・介護休業法第25条第1項は、職場で行われる育児休業・介護休業その他の家族の介護に関する制度の利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されることのないよう、事業主が相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定めています。厚生労働省の公式ページも、介護休業等に関するハラスメントの防止措置を講ずることは事業主の義務だとしています。

厚生労働省のパンフレットによれば、対象の制度には介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、介護のための所定労働時間の短縮措置が含まれます。防止措置が必要なハラスメントは、次の3つの型です。

介護休業等に関するハラスメントの3つの型(厚生労働省パンフレットより)
型内容行為者・回数の目安
不利益な取扱いの示唆制度の利用を相談した、請求した、利用したことで、上司が解雇その他不利益な取扱いをほのめかす上司。1回でも該当
利用の阻害請求したい旨を相談したら「請求しないように」と言う、請求したら取り下げるよう言う上司は1回でも該当。同僚は繰り返し・継続的なもの
利用したことへの嫌がらせ等嫌がらせ的な言動、業務に従事させないこと、専ら雑務に従事させること上司・同僚。繰り返し・継続的なもの

パンフレットが挙げる典型的な例には、「所定外労働の制限をしている人には大した仕事はさせられない」と繰り返し言われ、専ら雑務のみの状況になっている例や、介護休業を請求する旨を伝えたところ同僚から「自分なら請求しない。あなたもそうすべき」と言われ、再度伝えても同じ発言をされて取得をあきらめざるを得ない状況になっている例があります。

言動があるだけでは該当せず、客観的にみて、一般的な労働者であれば制度の利用をあきらめざるを得ない状況になるような言動(阻害)や、就業する上で看過できない程度の支障が生じるような言動(嫌がらせ等)を指します。

会社が「取り下げさせる」のは、ハラスメントの前に制度違反です。

パンフレットは、上司が個人的に請求の取り下げを言う場合はハラスメントに当たるとし、事業主として請求を取り下げさせて制度の利用を認めない場合は、制度を定めた各法に違反することになると説明しています。

パンフレットは、時期を調整できる休業等について、上司が時期を調整できるか労働者の意向を確認すること自体は禁止されないとしています。ただし、労働者の意を汲まない一方的な通告はハラスメントになる可能性があるとしています。

会社が講じなければならない措置

第25条第1項を受けた厚生労働省の指針は、事業主が職場における育児休業等に関するハラスメントを防止するため、次の措置を講じなければならないと定めています。

  • 事業主の方針等の明確化と周知・啓発。ハラスメントを行ってはならない旨の方針と、制度等の利用ができる旨を、就業規則や社内の資料で労働者に知らせます。
  • 相談に応じ、適切に対応するための体制の整備。相談に対応する担当者をあらかじめ定めるなど、相談窓口を整えます。ハラスメントに当たるか微妙な場合でも、広く相談に応じるものとされています。
  • 事後の迅速かつ適切な対応。相談があったときは、相談者と行為者とされる人の双方から事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正に対処します。
  • 原因や背景となる要因を解消するための措置。業務分担の見直しや業務の効率化など、制度を使う人の周囲の人に仕事が偏らないようにする取り組みが含まれます。

条文は、労働者が相談を行ったこと、または事業主による相談への対応に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いも禁止しています(第25条第2項)。相談したことを理由に不利に扱われることもありません。

会社に相談窓口が無い、方針が周知されていないといった場合の考え方は、会社が介護で守る義務の確認項目の「足りないと感じたときの相談先」にも整理しています。

困ったときの相談先

  1. 会社の相談窓口・人事担当者。まず社内の窓口に事実を伝えます。いつ・誰に・何を言われたかを日付つきでメモしておくと説明しやすくなります。
  2. 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)。厚生労働省の公式ページは、育児・介護休業法と仕事と介護の両立支援制度に関する問い合わせ先として、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)を挙げています。所在地は申出先と相談窓口から確認できます。
  3. 紛争解決の援助・調停。会社との話し合いで解決しないときは、労働局長による援助、紛争調整委員会による調停があります。制度の違いは介護休業を巡るトラブルの相談先にまとめています。

介護休業給付金に関する問い合わせはハローワーク、介護や生活の困りごとの相談は地域包括支援センターが窓口です。

未確認のまま扱っている事項

  • どの取扱いが「不利益な取扱い」に当たるかの個別の線引きは扱っていません。
  • ハラスメントに該当するかどうかは、状況によって異なります。パンフレットの例は限定列挙ではありません。
  • 損害賠償や労災など、法的な請求の可否は扱っていません。

よくある質問

Q. 介護休暇や時短を使ったことを理由に、評価を下げられることはありますか。

制度を使ったことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。介護休暇は第16条の7、介護のための所定労働時間の短縮等の措置は第23条の2などが根拠です。ただし、個別の評価が不利益取扱いに当たるかは状況によるため、労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。

Q. 上司に介護休業の相談をしたら「迷惑だ」と言われました。ハラスメントですか。

一概には言えません。厚生労働省の資料では、客観的にみて一般的な労働者が制度の利用をあきらめざるを得ない状況になるような言動は、利用の阻害に当たるとされています。上司の場合は1回でも該当し得ます。まず社内の相談窓口に事実を伝え、解決しないときは労働局に相談します。

Q. 同僚から嫌みを言われます。会社に対応してもらえますか。

同僚の言動でも、繰り返し・継続的なものは対象になります。会社には、相談に応じ適切に対応するための体制を整える義務があります(育児・介護休業法第25条第1項)。相談したことを理由とする不利益な取扱いも禁止されています(第25条第2項)。

Q. 会社の相談窓口に相談しても動いてくれないときは、どうすればよいですか。

都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。それでも解決しない場合は、労働局長による援助や、紛争調整委員会による調停を利用できます。

公式根拠

確認日: 2026年10月10日。個別の言動や取扱いが違法かどうかの判断は行いません。都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へご相談ください。

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